サメロ

「さあヨカナーン

これでとうとう

あなたは私のもの

私はお前に口づけをするわ」(サメロ)

サメロの物語をみるたびに

悲しさを覚え

胸苦しくなります

サメロがほっし

首をとられたヨカナーンは

聖者でした

聖者は性業というものがなくなり

俗な恋というものを

身にできなくなるそうです

そこにやどるのは

ただひたすらな全てを愛する

無償の愛、慈しみであると

いわれます

全愛は個人の恋には

こたえてはくれません

全愛はすべての生命への愛であり

すべてをいつくしんでいらっしゃる

そのため

個人の恋には、こたえられない

……

聖者への恋で有名なのは

日本では「きよひめ伝説」もあります

こちらも僧侶への恋から

執着へかわり、うらみへかわり

蛇になって巻き付いて

最後は死に向かいます

……

サメロは無自覚なふうあいでしたが

ヨカナーンへの恋慕が

その胸には

たしかに

やどっていたのかもしれません

一説には

イエスキリスト様を裏切ったユダもまた

イエス様への思慕をかかえていたといわれます

……

圧倒的な全てへの

無償の愛にたいする失恋

愛をゆたかに持ち

おしげもなく、人たち、いのちに、与える人に

むけられた

その人を

個人のものにしたがる恋情

けっして、恋は、かえってこない

たしかに俗から生まれた恋かもしれませんが

そこにはなにか

決して報われない絶望のような

物悲しいものが見て取れるのです

★物語へのリンク

サロメ (戯曲) – Wikipedia

安珍・清姫伝説 – Wikipedia

太宰治 駈込み訴え