猫とカメラ

暗い家。

電気をつけても暗い家。

庭越しに面している

縦長で四つ連なっている大きな窓の一つを開けて

家の隣の人が恋人から貰った猫の肉と毛でできた首輪を

見せに来た。

「どう?良いでしょうこれ?」

「此処でつけるわ」

首飾りをつけると地味なお隣さんがよりいっそう地味に見えた。

「いいですね」

私はカメラを取り出して言った。

座敷に座っていた叔母さんもカメラを手に持つ。

パシャ、写真を撮る。パシャパシャ。

何処かで人のざわめきが聞こえる。

つけっぱなしのテレビから誰かの声が聞こえる。

パシャ。

お隣さんも写真を撮る。

写真を撮ってる私たちの写真を撮る。

パシャパシャパシャ。

しばらく無言で互いに写真を撮っていた。

音と言えばテレビのざわめきだけ。

パシャパシャ。

お隣さんは満足げに隣に帰っていった。

ため息をついてカメラを座敷に転がす。

途端に啼く、カメラ。

にゃー

にゃー

にゃー

カメラから猫の鳴き声が響く。

子猫の鳴き声。

彼女の、お隣さんの本当の恋人が戻ってきて

この鳴き声を聞いてしまったらえらいことになる。

私たちは必死に隠そうとした。

座敷の窓を開けて外に出してみる。カメラを。

声は大きくて、

「これをガラッと開けられちゃうわね。」

窓に触りながら私は言った。

きっと不審に思った恋人が窓を開けてしまう。

にゃーにゃーにゃー

叔母さんがラジオの側に置いて

「これはテープですよー」

テープ。と言った。

隣から悲鳴が聞こえる。

きゃーーーーー!

「無くしたわ!!」

お隣さんが暗い窓を開けて飛び込んでくる。

首飾りのことだと。すぐに気がついたので

「探してあげますよ」と言った。