おどろ木とパン

木々の生い茂る森の中で私は門番であった。

木々は一本ずつに精霊が居て人の形を取って私の前をふらふら歩いた。

私の意識は突如、新入り、柳の木の意識になり、

柳の木として森を歩いていた。

すると悪い奴が森の木々の側からゴシゴシと土を掘っている、

土を盗む気なのだ。なにせとてもいい土だから。

柳の木である私は何をするわけでもなく其処にふらりと近づいた。

私の存在に気がついた悪い奴ら二人組は

大きな石を振り上げてガンと一発、私を殴った。

私の意識は柳の木から離れて宙に浮いた。

悪い奴らは倒れた柳の木をそっと持ち上げると、

掘っていた穴の中にぽいっと放り投げた。

穴の中には先客が居ておどろ木が木の姿のままにほおっておかれていた。

(おどろ木とは幹に悪魔のような顔が浮き出ているちょっとこわい木のこと)

穴は広くて、ちょっとしたドームになっていた。

地面は柔らか、悪い奴らが掘った「穴」空の光でみると

天井には無数の木の根っこが絡まっていた。

「悪者が掘ったからじゃなくてこの木の下には元から穴があったのだ」

柳とおどろ木は連れだって歩いていった。

そしてちょっと坂になっていて浅く地上に穴が開けている出口から

木々の精霊によって救い出された。

私はおどろ木をその出口の側で、なおかつ森の入り口の側でもある、

どぶ川が流れている方岸に植えた。

柳もその側に置こうとしたがいやがったので森の中においた。

「此処に来る人を驚かして門番になるんだよ」とおどろ木に言っておいた。

おどろ木はその通り、人々を脅かして

(彼はうなったり幹をゆらしたりするのがとても上手でした)門番になった。

そしておどろ木は枝に「パン」を実につけるようになった。

それはフックらでふわふわでバターとミルクの味が濃くてとても美味しかった。

木々の精霊と私は争ってそれを食べた。

しかしおどろ木は「どぶ川の水を吸い上げて実を作っているのだ。

こんな水で美味しい物を作って恥ずかしい」と言って泣くのだった。

そこでいやがる柳を説得して側に植えて、

「柳の根と君と絡まって、どぶの水を浄化させるから、もういいよ」と言ってあげた。